(1999.9.13)


3歳の誕生日は9月10日金曜日。当日、母子手帳になるなるの身長、体重を記入した。身長、90cm。体重、12kg。相変わらずのコマメちゃんである。「気になることはありませんか?」という自由記入欄があって、何気なく横にいたとうちゃんに、「外でとったなるなるの写真、よく左目をしかめてるよね」と言ったら、とうちゃんもちょっと気になってるとの返事。あと数ヶ月すれば3歳児検診がやってくる。その時に聞いてみようかと思ったけれど、一応診てもらっておけ、というとうちゃん言葉で、週の明けた月曜日に県立病院の眼科にかかることにした。気になりだしたらすごく気になるもので、なんだか不安な気持ちで週末を過ごした。

私の話を聞いて、なるなるの目を診察した若い先生は、「おかあさんの気のせいでしょう。ビートたけしがピクピクと目をチックみたいに動かすでしょ、ああいったのじゃないですか?」とそっけない。いかにも「心配しすぎの過保護のおかあさん」といった態度だ。やっぱりくるんじゃなかったなーと少し居心地が悪くなる私。一応瞳孔を開く薬をさして、目の検査をする。「病気はありませんね」と先生。「目がちょっと赤いから、結膜炎かな。薬を出しましょうね。あとは・・・どうしましょうか。一応屈折検査もしてみましょうか」とめんどくさそうに先生が言う。「もういいです・・・」と言いそうになるのを押えて、「念のためにお願いします」と言ってみた。結果的にこれがよかったのだ。

あまり小さい子の検査に使うことがない器械らしく、技師の方も苦労している。「額をバーにつけて!目をキョロキョロしないで!う〜ん、はかりにくいなあ!」右目はなんとか測定できたけど、左目は嫌がってなかなかうまく測定出来なかった。大人なら2、3分ほどで終わる検査に、15分近くかかってしまった。途中で人形が出てきたり、アメ玉が出てきたり、技師の方も涙の努力だ。

そしてその数値を目にしたとたん、先生の顔がみるみる曇った。
「強度の遠視ですね。左目は白内障のおばあさんくらいしか見えてないでしょう。」

「やっぱり何もないですね、心配しすぎですよ」とあざ笑われると思っていたので、一瞬言葉が理解できなかった。

「視力の検査をしないといけませんね。いつがいいですか?いや、こうなったらいつでもいいですよね。早くしないと。う〜ん、再来週まで予約がいっぱいだな。でもそうも言ってられないから来週予約を入れましょう。そして弱視治療の眼鏡を作りましょう。」さっきまでとはうってかわった先生の真剣な口調に、少しとまどった。

「視力はあるんですよね」とかろうじて聞いた私に、先生も「ちょっと実験してみましょう」ということで、右目をテープでとめての実験をしてみた。待ち時間の間、ぐずるなるなるのために売店で買ったばかりの絵本を開いて見せてみる。「ひこうき。でんしゃ。」大きな物は識別できるようだ。「じゃあ、これは何かわかるかなー?」と先生は3cm程のちいさなゾウさんの指人形を取りだした。「・・・」一生懸命、右目のテープをはずそうとするなるなる。わからないの?一瞬不安になる。思わず「ゾウさんだよ」と教えそうになってしまった。先生が右目のテープを外すと、なるなるは満足そうに「ぞーしゃん!」と答えた。
ゾウさんってわからなかったんだ・・・・
ショックだった。

帰りがけ、お昼休みのとうちゃんの現場によって報告をする。とうちゃんも動揺を隠せない。私達夫婦はそろって視力がいい。なので、目が悪い、という事実がどうしても素直に受け入れられない。近視だとか遠視だとか、聞いたことはあってもそれがどういうものなのか正直言ってよくわかってさえいない。情けない。何より、なるなるの見ている世界がどんなものなのか理解できないのがつらい。

家に帰ってからも、片目ずつ数字を見せてみた。右目で見せるものは次々と「さん。なな。いち。」と言い当てるが、左目だけになるととたんに何も言えなくなり、必死で右目に当てている私の手を振り払おうとする。そして最後には、「わからないの!みえないの!」と怒った口調で言う。4cm四方ぐらいの大きな数字なのに・・・と悲しくなって、思わず涙が出てしまった。

このままこの子は一生左目がよく見えないままなのかしら・・・そう思って気分は落ち込む。なるなるを昼寝させてる間に、とにかく資料をと、パソコンに向かう。こんなときインターネットは便利だ。「子供の遠視。弱視。治療。」次々キーワードを打ち込んではあちこちのページを見に行く。

そこでわかったことは、近視の子は弱視にならないが、遠視の子は弱視になるということ。(赤ん坊はもともと遠視ですが、この場合遠視の度が強い子供を指しています。)遠視は遠くも見える良い眼と誤解されてるようだけれど、実際は眼を休ませた状態にすると、遠くも近くもぼんやりとしか見えない目のことだ。近視の子は、近くの物を見るときには近視の目も使うので弱視にはならないが、遠視の子は近くも遠くもよく見えないので、見えないほうの眼を使わない。こういった片側だけの弱視(不同視弱視というらしい)の場合、普段正常に物を見ているように見えるので、親でも気づくのが遅れることが多いらしい。

そしてもう一つ。遠視性弱視の場合、遠視の目を眼鏡で矯正することによって、最終的には1.0の視力にまで回復させることも可能だということ!(ただし遠視そのものは治りません。)それは3歳での発見がボーダーラインらしい。子供の視力は6歳〜8歳までに確立してしまうので、それまでに矯正が行われないと、弱視はいくら訓練しても改善しない。

なるなるは3歳になったばっかり・・・ぎりぎりすべりこみセーフといったところかな。6歳まで、もう3年・・・ううん、あと3年もある!8歳までなら5年もあるじゃないか!ちょっと気分は明るくなった。改善される、という情報はかなり私の気分を向上させた。

それにしてみ、左目をしかめるクセ(と思ってた)自体には、正直言って1歳台から気がついていたので、もっと早くに眼科にかかっていれば・・・という後悔はどうしてもぬぐいきれない。だけど、後悔しても現実は現実だし、治る、という方向に向かって進んでいかなくちゃ、と暗い顔をして帰ってきたとうちゃんと話し合った。

とにかく、前向きにがんばろう!