いよいよ検査の日だ。前の日から何度も何度も、「先生の言うことをよく聞こうね。ちゃんと検査をしようね。」と言い聞かせる。数日前から双眼鏡を覗いて、片目ずつ10を数える練習もしてきた。なんとか無事に検査出来ますように・・・
前回、あまりに言うことを聞かなかったので、今回はとうちゃんも一緒に行くことになった。なるなるはとうちゃんが大好きで、よく言うことを聞く。
「なるなるく〜ん」と呼ばれて検査が始まる。今回はとうちゃんがなるなるをひざに据えてイスに座る。レフと呼ばれる器械でなるなるの眼の屈折を測る。今回はとうちゃんが一緒のせいか、はたまた練習の成果か、とてもおとなしい。看護婦さんも「すごいね!上手だね!」の連発だ。フフン、と思ったのもつかの間、カタカタと印刷されて出てきた数値を見た看護婦さんは、「あれ?これって右目だなあ〜」・・・んもう!検査は最低でも左目だけは、ってことだったのにぃ!・・・
余計な右目の検査でガンバってしまったなるなるにもうやる気はない。
とりあえず少し休んでから、ということになり、10分ほど気分転換をして、再度挑戦だ。イヤがるなるなるに、ここしかない、というタイミングでカバンを開けて見せる。中にはなるなるがめったに口にすることの出来ないお菓子が入ってる。「ほら、ちゃ〜んと検査したら、食べようね!」これでイチコロさっ!きらりんと目を輝かせたなるなるは、とてもおとなしく検査を済ませた。上出来!上出来!「バッチリです〜!」と看護婦さんもうれしそうだ。先生に呼ばれて説明を受ける。難しい顔をして数値を見ていた先生は、
「遠視がかなり強いですねえ。でも、それよりも、乱視がひどい。」
乱視・・・乱視の弱視はやっかいだって、何かに書いてたなあ・・・。
「角膜がかなりゆがんでますねえ。」
「それって、生まれつきってことですか?」
「そういうことですね。」
「視力はどれくらいあるんでしょうか。」
「良くて0.1、0.2ってとこでしょうね。やはり弱視対策の眼鏡をかけないといけないな。」
「それは弱視にならないように、ってことですか。」
「いや、もうすでに弱視になってます。3歳ですからね。ですから、少しでも矯正視力を上げる訓練をしましょう。今日からアイパッチをして下さい。1日、そうだな・・・3時間。」アイパッチ・・・色々調べてたので、これは予備知識があった。
遮閉法といって、健全な方の目を塞いで、弱視の方の目を使わせる訓練のことだ。眼鏡だけでは矯正が困難な弱視の治療に用いられるとどこかで読んだ。遠視性の弱視なら眼鏡だけで矯正出来たんだろうけど、乱視がひどいということで遮閉法も取り入れようということになったのだろう。それにしても、1日3時間も! 10秒塞いだだけで体をよじってイヤがるのに。「ムリです!」という言葉を飲み込む。ムリだと思っていても、やるしかない。親の私が投げてはダメだ。
そしてフッと思い出したように、先生が言う。
「右目ほど視力が上がることはないでしょう。それでも少しは上がりますから、がんばりましょう。」あまり期待しないでくれ、と私には聞こえた。
今よりは上がるが、右目と同じほど良くなることはない。かなりよくなると信じ込んでた私にはちょっとショックな言葉だった。じゃあ、どれくらい良くなるんですか。聞きたいのだけれど、怖くて聞けない。それに、「やってみないとわからない。」それが答えに決まってる。
帰りの車の中、とうちゃんについ不安をぶつけてしまう。
「ホントに良くならないのかなあ。そんなで教科書はちゃんと読めるのかなあ。・・・」
とうちゃんは「もともと良かったのが悪くなったのなら、良くなることもあるだろうけど、もともと悪かったのが良くなることはあまりないんじゃないか」とブスっとしている。そう、実はとうちゃんもすごく気にしているのだ。普段は温厚で、感情を表に出さないとうちゃんが、先週からずっとイライラしていたのは、なるなるが目薬の影響で、日ごとに左目を使わなくなっていくことへの不安だったのだ。とうちゃんはとにかく目薬をやめて、なるなるが前のように普通に物を見ている状態に戻って欲しいのだ。(実際は左目を使ってないにしても。)たしかに、いかにも「ボク左目が悪いんでーす」というような、今のなるなるの仕草はつらい。
だけどとにかく父ちゃんのイライラの原因の目薬は終了だ。家に帰るやいなや、「残った目薬はさっさと捨てとけ!」と、イマイマしそうに言うとうちゃん。「なるなるに辛い思いをさせる、にっくき目薬め!!!」って態度だ。検査に必要だったんだから、仕方ないじゃん・・・と心の中でしぇるはつぶやく。
でもね、次はアイパッチが待ってるんだよ。
私の調べた限りでは、このアイパッチは、視力が出るまで、数ヶ月から長ければ年単位で続けなければならないものだ。でも、これはとうちゃんには内緒にしておく。とうちゃんはどうも、このアイパッチは眼鏡が出来るまでのつなぎだと思ってる感じだ。そんなとうちゃんに「いつまで続けなければいけないかわからないんだよ」というのは酷だ。いきなり3時間はまずムリなので、今日はとりあえず5分、そして明日は10分、と様子を見ながらやってみようということになった。ガンバレ、なるなる。