2000.07.19
手術が終わってからの1週間の間に、経過診察と処置は3回。
一度目は、退院したすぐ翌日の土曜日だった。
手術後の処置のためだけに来ている患者しかいないと聞いていたが、朝10時の予約時間に病院に行くと、10人以上の人が来ていた。水曜に手術を受けた子供だけで5人、あとの5人はいつだかわからないけど色々な手術を受けたであろう大人が5人ほど。うわー、待つのかなー、とうんざりするが、今日は簡単な診察だけのようで、次々進む。待合室でガーゼを外すように言われ、なるなるのガーゼも外そうとするが、「はずすとイタイからやだー!」と断固拒否される。仕方がないのでテープをすぐに外せる状態だけにしておいて、順番を待つ。なるなるはたっくんと再会し、うれしそうだ。
なるなるくん、と呼ばれて診察室に入る。今日は手術した夜に診察に来てくれた、河村隆一先生だ。なるなるの目をライトをあててのぞき、手術痕を確認する。「傷は順調のようですね」とニッコリ。斜視がどうなったのか聞きたかったのだが、聞くより先に「検査は月曜日にしますから」と看護婦さんに言われ、詳しいことは月曜までお預けだ。
退院の日と同じように、看護婦さんに目を洗ってもらい、軟膏を入れ、眼帯でふたをしておしまい。10時半には病院を出ていた。
二度目は、月曜日。
朝9時という少々早い時間、ラッシュの中でなるなるの目を気遣いながらの通院は少し疲れた。やはり20人近くの患者が待合室で診察が始まるのを待っていた。
この日なるなるを診て下さったのは、副院長。・・と思う。院長先生と、名字が同じだったし。この病院は、院長と、院長の息子さん2人、そして他の先生が3名ほどいる。
先生は、前回と同じくライトをあてて、目をのぞく。
「うん、いい子にしてたから、治りが早いな。ボク、どうや?どんな感じや?」
先生に聞かれるが、なるなるはなぜかモジモジくんになっている。病院に行くまでは、「メガネかけないと、なるのメメ、わるくなっちゃうのに、ってせんせいにおしえてあげるの。せんせい、しらないから。」とエラそうに言っていたくせに・・・。
先生はなるなるの目をゆっくり観察しながら、話しかけている。
「どうや?いい子にしてたから、もうあんまり痛くないやろ?」
「・・ちょっとダケ。」
「ハハハ、あのなあ、大阪ではな、そんな時は、『ボチボチです』言うんやで!言ってみ、ほら、『ボチボチです!』。」
「・・・ボチボチ。」
「はっはっは!ほんでな、ちょっとアカンな〜って時はな、『わやですわ〜』言うねんで、言ってみ!」
「・・・ワヤワヤ?」
わはははは〜!と先生はゴキゲンだ。・・・大阪弁講座まで受けられる眼科であったとは・・。
「じゃ、今日から、眼帯、外してみましょうね。」と先生が急に真顔で私に言う。
「え、もう、外していいんですか?!」予定では、木曜日のはずだったが・・。
「子供は治りが早いですからね〜、ボク、どうや?外すか?そのかわり、1日5回、目薬さすんやで。約束できるんやったら、今日から眼帯外そうな!」
先生が出した大きな小指に、なるなるはうれしそうに小さな小指をからめた。
「ゆびきり、ゲンマン!!」
前回と同じく看護婦さんに目を洗ってもらい、眼位を測るということで、検査室に移動する。看護婦さんが、いろいろな角度のついたプリズムバー(勝手に命名)を手に、裸眼で斜視の角度を測り、「え〜と・・」と言いながらカルテになにやら書き込んでいる。あ〜〜、どうなのだ!気になる、気になる・・・!!「あのー、斜視の具合は、どうですか・・・」とガマン出来ずに聞いた私に、「あ、斜視は、減ってますよ〜」と看護婦さん。
むむっ、「減ってますよ〜」か・・・。正確な角度は聞かなかったが、完全に無くなったわけではないようだ。一瞬ガッカリするが、「内斜視は弱めに矯正しますから」と先生がおっしゃっていたのを思い出す。
そうだ、そういえば眼鏡はどうするのだろう。看護婦さんに聞くと、ちょっと先生に聞いてきます、という返事。待っている間、なるなるの正面にまわり、初めて自分の目で、なるなるの目を確認する。まだまだ白目は真っ赤だし、縫い目もモッコリしてる・・。こんなで眼帯、外して大丈夫なんだろうか?
実際斜視はどうなんだろう。なるなるの目の前で、指を遠ざけたり近づけたりしてみるが、確かに前より寄りはかなり少ない気がする。手術前は、近くを見る時は黒目が半分ぐらい内に入っていたが、そうならない。複視はどうなったのだろう、と思い、なるなるに「どう、おかあちゃん、2人見える?」と聞いてみる。なるなるは一生懸命目を寄せて見ていたが、「・・・見えない。おかあちゃん、ひとり。」と言う。何度確認してもそうなので、どうやら複視はなくなったようだ。ああ、よかった・・・。
結局次の診察までは、パッチなしの眼鏡だけということになり、眼鏡をかけて帰宅。「よかった、メガネしてたら、なるのメメ、わるくならないネ!!せんせい、しらなかったんだよね!」とごきげんのなるなるだった。
そして、手術からちょうど1週間目の今日が、3回目の診察だった。
10時半の予約で行くと、いつもよりすいている。これは、順番が早いかな・・と思っていたのに、しばらく待っても診察が始まらない。おかしい・・・と思っていると、上から眼帯をした子供が、続けて二人降りてきて、ああ、そうか、今日は手術の日なんだ・・とようやく気がつく。部分麻酔の子供たちの手術が終わり、今ごろは全身麻酔の手術が始まる時間だ。ちょうど1週間前のこの時間、私は手術室に消えてしまったなるなるを、不安な気持ちで待っていたのだ。
先生はみんな上に上がってしまっていて、下の診察室には初めて見る女の先生が1人いるだけだった。手術の日だけ来ている非常勤の先生なのかもしれない。ようやく11時15分ごろ呼び出しがかかり、診察を受ける。ライトをあてて目を診察し、レンズをのぞいてゆっくりなるなるの目を観察する。「傷はものすごく順調ですね・・予定通り、今日からお風呂も洗髪もして下さい。」と私に話し、あとはカルテをめくりながら、「うん・・角度もほどよく矯正されてますね。」とつぶやいた。
ほどよく矯正されてる、か。
専門家でない私には、どれくらい「ほどよい」のか、さっぱりわからない。確かに斜視は減ったように思うが、特に裸眼の時に、近くの物を見る角度によっては、ぐっと内斜視になる。前ほど黒目の入りは少ないが、手術をしたら斜視はまったく無くなると思っていたのは、どうやら違うようだ。眼鏡をかけたら、近くの物を見る時でも斜視はほぼ無くなったようだし、複視もないので、それでいいのかもしれない・・・。遠視が強いなるなるは、眼鏡をかけることが前提となっているので、眼鏡をかけた時に斜視が消えるよう、微妙な調整をしたのかもしれないな。そういえば、手術のあと、プリズムを使うかもしれないからとっておくように、って言われていたし、角度がある程度残るのは計算の上なのだろうか・・・。とにかく詳しい話は、院長先生に会った時に、聞くしかない。
パッチはまだしなくていいですか、と尋ねると、筋肉を動かした目の位置が定まるのには時間がかかるので、パッチをして左目に負担をかけるには少し早い、もう少しは眼鏡だけで、というお話しだった。それもそうだ、パッチをしたら手術をした左目だけで見なきゃいけなくなるわけだもんね。まだ糸が残っているが、ほとんど外れてきているので、目ヤニと一緒に出てしまうでしょう、と先生は続けられた。
今日もまた、傷の診察だけで検査はなし。次回、来週から分院に戻ることになり、予約票を受け取る。予約票には、「矯正視力(左右)、眼位(APCT、ステレオ)」と書かれている。ようやく次回、視力と眼位を測ってもらえるようだ。
看護婦さんに、挨拶をして本院をあとにする。
今度、ここに来る時は、また手術の時だ・・・。
そんな日が、来ませんように。2度と、このドアをくぐることがありませんように。・・・と私は願った。